2020年7月3日に公開された映画、MOTHER(マザー)
映画のタイトルにもなっている母親役は女優の長澤まさみさんが熱演。
長澤まさみさんにとって初の汚れ役として話題になりました。
物語が重くリアルな内容なだけに、観ていると気が沈んでしまいますが、この映画の元ネタとなったある母親と少年、事件について調べてみました。
Contents
長澤まさみ主演映画MOTHERのあらすじ
まずは、映画MOTHERがどのような内容の物語なのか簡単に紹介します。
男にだらしなく自堕落な生活を送るシングルマザーの秋子(長澤まさみ)は、息子の周平に異常に執着する。秋子以外に頼れる存在がいない周平は、母親に翻弄(ほんろう)されながらもその要求に応えようともがくが、身内からも絶縁された母子は社会から孤立していく。やがて、17歳に成長した周平(奥平大兼)は凄惨(せいさん)な事件を引き起こしてしまう。
https://movies.yahoo.co.jp/movie/371377/story/
子供よりも男優先でまともに働きもしない母親と、その母親と暮らすしか行きていく道はない息子。
客観的に見れば「早く逃げ出して!」と思ってしまうだめな母親でも、子供にとってはそれが一番身近な大人です。
例えそれがいけないことだと感じていながらも、母親の要求にこたえて認めてもらおうと、最終的には犯罪にまで手を染めてしまう、ある親子の物語です。
長澤まさみ主演映画MOTHERは実話?
映画MOTHER(マザー)の物語は、実際に起こったある事件が元ネタになっているようです。
『MOTHER マザー』は、2020年7月3日公開の日本映画[1]。PG12指定。監督は大森立嗣、主演は長澤まさみ[2]。実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得たものとなっている[2]。
Wikipedia
映画の中で、「息子が起こしてしまう事件」というのが、この実際にあった殺害事件なのでしょう。
そして映画の物語は、その事件の背景となった母親と少年の関係などが主にストーリーとして展開されているという風に感じます。
では、その「少年による祖父母殺害事件」はどのような事件だったのでしょうか。
次の項目で詳しく紹介していきます。
映画MOTHER、元ネタの事件は?
映画MOTHERの元ネタとなった事件は、2014年3月に埼玉県川口市で起こった
「川口祖父母殺害事件」です。
この事件は、当時17歳の少年が埼玉県川口市に住む母方の実祖父母を殺害し、現金・キャッシュカード等を奪った強盗殺人事件です。
当初ニュースでは、”少年が起こした凶悪事件の一つ”として、小さく取り扱われ、あまり大々的に報道されることはなかったといいます。
しかし、この事件について調べていくうちに、ただの凶悪事件の一つとして取り扱われるにはあまりにも重い背景がありました。
少年の母親像、その母親との関係、少年が育った環境
どれも、普通に生まれ育てられた人にとっては、想像を絶する背景がこの事件にはありました。
元ネタとなった「川口祖父母殺害事件」の背景
川口祖父母殺害事件の犯人である少年は、1996年に埼玉県に生まれ、両親と3人で暮らしていました。
しかし、少年が4歳になる頃には家庭は崩壊し始めます。
一家の借金が膨れ上がり夜逃げするも、母親は苦しい家計のために働きもしないどころか、父親から渡された家賃分のお金をパチンコなどに浪費していました。
そんな母親も、少年の小学校入学を機に水商売で働き始めますが、それと同時に母親はホストに通い狂い、一方の父親も愛人の家に入り浸り、家に帰ってこなくなります。
この頃には家に知らない男が出入りしたり、母親が男を追って1ヶ月もの間家に帰ってこないこともあったといいます。
そんな日々が続き、少年が10歳のときに両親が離婚。
母親が再婚し、少年は母親と再婚相手の男と暮らすようになりますが、やはりそれも普通の生活とはかけ離れたものでした。
母親と養父は住み込みの仕事をするもすぐに仕事を辞めます。
その後は、さいたま市内のモーテルで主に生活をし、泊まるお金がなくなるとその敷地内にテントを張って寝泊まりするような生活でした。
その間に少年は、実の母親と養父から、精神的・性的・身体的虐待を受け、十分な食事も与えられていなかったといいます。
また、いくらあっても足りないお金のために少年に親戚のところへ行かせ、お金を借りさせていました。
こんな状況の子供を、周囲の大人は誰一人として気づくことが出来なかったのか、と私は調べていて思いましたが、
この頃には少年は、居所不明児童となっていたんですね。
転居届を提出されていないため学校にも通えず、行政の目も届かないような存在になっていたのです。
それでもその途中、少年が中学2,3年生の頃
母親が生活保護を受給し始め、フリースクールに通える時期もあったそうです。
しかし、母親が生活保護を受給するに当たって、生活が干渉されることを嫌い、簡易宿泊所を出たためにもとの生活に戻ってしまいます。
その後は養父が働く塗装会社の社員寮で暮らしていましたが、その養父が失踪。
養父にも捨てられた自分たち一家のために、少年はその塗装会社で働き始めます。
少年が懸命に働き、母親の言う通り給料の前借りなどもするも、母親の浪費にお金は消えていきます。
お金を取ってくるようにどんな手段でも使えという母親に
翻弄され、追い詰められる少年。
事件当日、母親の「祖父母を殺せばお金が手に入る」
という一言から、少年は祖父母宅に行き、犯行に及んでしまいます。
実は、私は犯人の少年と同い年です。
もし自分が少年と同じ境遇だったら…
普通に帰る家があり、両親に養ってもらい、学校にも行き、世間一般的に普通な生活で育ってきた私には、想像することも難しいです。
自分と同い年の子がこんな境遇にいたことも悲しく、怖い気持ちもあります。
幼少期は親の存在が絶対で、自分と親が暮らしている”家庭”こそが世界のすべてだと思います。
その”家庭”が、このようなものだったら、通常の私達と同じような考え方、思考はできないのではないかと感じます。
川口祖父母殺害事件の母親像
川口祖父母殺害事件の元凶とも言える母親がどんな人物だったのか。
前述の事件の背景での
「過度な浪費」「生活保護受給時の干渉を過度に嫌がる」ことから
「自分の私利私欲を我慢できない、どうしようもないほどの身勝手な人物」だとわかります。
でもどうしてこの母親もこんな性格になってしまったのか、
殺害された祖父母はこの母親をどのように育ててきたのか
母親の生い立ちにヒントがあると思い、調べましたが、有力な情報を見つけることは出来ませんでした。
ただ、何度も借金をせがむことに拒否をした祖父母や親戚の対応は間違っていなかったと思います。
ですが、拒否すると同時に警察や行政に相談することは出来たはずです。
どうしてそれを、子供のためにしてあげられなかったのか…と思います。
また、この事件が発覚し母親にも刑罰が下ったとき、母親は
「なぜ自分にも罰が下るのか」
といったことを発言しています。
息子へ申し訳ない気持ちもなければ、自分が悪いことをしたとも思っていない発言です。
このようなことから、一般的な愛情が欠落している人間だと感じます。
事件の犯人・少年の人物像
少年はこのような劣悪な環境で生まれ育ちながらも、まともに生きようと一生懸命だったと思います。
少年は全く学校に通えていなかったわけではなく、ほんの1,2年だけ学校に通っていました。
その中で、周りの友人達と自分の家庭が違うことに気づく機会があったと思うからです。
それを裏付けるように少年は、母親と養父の間に出来た妹に対し、両親のかわりにその妹の世話をしていたといいます。
自分も満足な食事ができていないにも関わらず、妹のために食料を調達していました。
そして事件の裁判後、裁判官に対し
「自分のような子ども、人間を作らないように」と発言しています。
自分のことを客観視できていて、人を思いやる気持ちもちゃんと持っている人物だと感じました。
また、事件当日
祖父母宅に向かったとき、少年は殺さずにお金を借りることを考えていたといいます。
その一方で母親から認められたい、愛されたいという
”普通の子ども”としての感情が複雑に絡み合っていたのではないかと思います。
事件の母親と少年の関係性
母親と少年の関係は、普通の親子ではありません。
絶対的な上下関係、服従関係が感じられます。
母親は事件の裁判で自分にも有罪が確定したときにも
息子への愛情を感じられるコメントは皆無でした。
その一方で息子は
どんなにひどい母親でも憎みきれず、母親の要求に一生懸命応えようとしていることからも、「親子で安心安全な家庭で暮らしたい」と願っていたのではないでしょうか。
川口祖父母殺害事件の結末
事件は防犯カメラからすぐに発覚し、
少年は強盗殺人罪として逮捕。
長年の虐待から母親に逆らえなくなっている精神状態を加味されつつも、懲役15年の刑を受けています。
一方で母親は、殺害を指示したという証拠がなかったことからただの窃盗罪として懲役4年6ヶ月の刑で終わりました。
証拠がないとはいえ、この少年の生い立ちや母親の言動から、
あまりにも母親の罪が軽いのではないかと納得はいきませんね。
映画MOTHERで元ネタの事件はどこまで再現されている?
映画MOTHERでこの事件がどこまで再現されているかは、
ネタバレ等の危険があるのでここでは記載しません。
映画を見た後にこの記事で答え合わせをしていってほしいと思います。
ですが、この映画の撮影は埼玉県で主に行われているので、かなり実話に忠実に描かれていると思います。
映画MOTHERの元ネタの書籍
この「川口祖父母殺害事件」について熱心に取材した記者が出版した本があります。
タイトル「誰もボクを見ていない」
読書が好きな方、もっと映画MOTHERの理解を深めたい方はぜひ読んでみてはいかがですか。
まとめ
以上、映画MOTHERの元ネタになった事件「川口祖父母殺害事件」について詳しくご紹介しました。
まだ映画を見ていない方はぜひこの事件のことを頭に入れながら、鑑賞するとより理解が深まると思います。
長澤まさみさんの初の汚れ役にも注目して観てみてください。